2017年06月01日

2014.07.18(金)(58)エピローグ 自転車返却の旅

 最後の制覇目標が金太郎飴のようなショッピングセンターで、充実感というものからはだいぶ遠いと感じるが、本日の「めぐ」の全行程がこれにて終了した。しかし、私にはまだもう一つ重大な仕事が残っている。レンタサイクルを返却しなければならないのである。
 ここから最も近い養老鉄道の駅は、さっきかすめた美濃高田駅。しかし、美濃高田は無人駅であり、レンタサイクルの扱い駅ではない。電車内に自転車を持ち込める「サイクルトレイン」が利用できれば良いのだが、残念ながら平日は15時で終わりである。そうなると、美濃高田の1駅先、養老駅まで自転車を漕ぐ必要がある。最後に残されたのは、事前の計算で5.64km、24分のサイクリングであった。
 時計を見ると、夕方5時ジャスト。本来なら、この時間までに養老駅での自転車返却まで済んでいる計画である。今朝、駒野駅で申込書を書いた時、夕方4時過ぎには全部終わる予定で返却予定時刻を「17時」と書いたのだが、残念ながらそこには間に合わなかった。
 とりあえず、養老駅に電話を入れた。返却が遅れて18時頃になる旨を伝えると、「ご丁寧にありがとうございます」と返事をいただいた。

 イオンタウン養老から高田の街までは、これまで来た道の逆コースである。田んぼの真ん中を突っ切り、名神高速を突き抜け、急坂を上がって牧田川を渡る。高田橋を渡り切った後の下り坂は、市街地に突入して交通量が多くなったこともあって、あまりスピードが出せなかった。町役場の前を通り、押越出張所を横目で見つつ、[珍品センター]の方からやって来た県道養老平田線と交わる石畑の交差点までは、何事もなく経過した。
 様子が変わってきたのはここからである。いま走っている県道96号大垣養老公園線は、美濃高田駅付近からずっと養老線の線路に沿っているが、石畑の交差点を過ぎたあたりから、また微妙にペダルが重たくなってきた。目には見えないけれども、ゆるい上り坂になっているのだろう。ペダルが重いといっても、普段なら難なく乗り越えられる程度の坂(というより傾斜)だと思うのだが、それが全然登れない。こんな道で自転車漕げないの、と思うぐらいであった。足ががくがく、というか、左の膝を曲げると痛い。しかも右足も力をかけるとつってきてしまう。
 そして、明らかに坂道だとわかる道に変わってきた。もうこのあたりまで来ると、漕ぐ合間に休むのか、休みの合間に漕ぐのか、わからなくなっていた。石畑の交差点を過ぎてからは、線路からちょっと離れたところに何軒か住宅が散在し、基本的には住宅と畑と駐車場ばかりであった。建物が切れたあたりが、ちょうどその微妙な坂道のサミットのようだ。ここまで来ると、養老線の線路を1mぐらい見下ろしている。
 うっそうと茂った森の中で、「高さ制限4.3m」という陸橋の下をくぐった。この陸橋は柏尾谷という天井川である。天井川は午前中に養老線でトンネルを通ったけれども、ここはトンネルを掘るよりも安上がりだったか、高さが足りなかったかで、崩して陸橋にしたのであろう。天井川のあたりに人家はなく、竹薮になっていたり石垣が築いてあったりした。天井川の陸橋を抜けたあたりから、上り勾配が明らかにきつくなったが、そこを過ぎると再び住宅が固まって建ち始めた。
 前方に行政が立てた青い矢印看板が見えた。この先の四つ角で左折すると養老駅であるという。ちなみに、直進すると桑名・海津、右折すると養老公園だそうである。交差点の手前に1本、左に行く下り坂があるが、ここでだまされてはいけない。青い矢印看板が示す交差点は、坂を登り切った信号のところである。
 信号のある交差点までやって来た。そばにひょうたん屋があった。養老の滝のお膝元ゆえ、ひょうたんの加工品のひさごを売っている。養老町は有名な観光資源がある分恵まれており、通常の田舎町のような生計の立て方ができなくなっても、観光で食っていくことができる。いずれにしても、天井川からここ養老公園東の交差点までの間が、最大の胸突き八丁であった。地形図で標高を見ると、石畑の交差点が約13m、1km離れたこの四つ角が33mであって、勾配としては20パーミル。今日の行程の中では急な坂の一つで距離も長かった。坂道としてはごく普通のハズだが。
 交差点を左に曲がると、その先は駅に向かって右にカーブしつつ、一方的な下り坂であった。上多度橋という橋が架かっており、橋の下には滝谷という水の流れていない川があった。さらにどんどん下がっていく。ここも古い住宅地だが、商業はほとんどないようだ。
 加速がつき始めたところで、左前方に最終目的地が現れた。養老駅である。朝にならない夜がないように、苦行から解放される時がようやくやって来たのであった。

 17:43。私は、養老鉄道養老駅に到着した。
 養老駅は渋い平屋建ての木造駅舎であった。養老公園の観光客を当て込んだ駅だけれども、それにしても駅舎を重厚に作りすぎていないか。そう思っていたら、1919(大正8)年の築で、初代養老鉄道の本社屋だという。養老の滝の伝説にちなみ、駅の内外はひょうたんで埋め尽くされている。
 駅舎を背景に自転車の写真を撮った後、出札窓口の駅員に、自転車を返しに来た旨を告げる。40km余り行動を共にしてきた“愛車”とはこれでお別れである。返却作業は、自転車を引き渡し、駅員の「もうそれで結構ですよ」の一言であっさり終わった。当初返却期限の17時には間に合わなかったけれども、17:45には返却できた。16:10をメドとしていたから、トータルでは1時間半ほどの遅れということになる。自転車を漕ぐスピードを時速12kmで計算してこれだから、自転車で回るプランは8〜10km/hで計算しないとダメなようだ。16km/hで計算していたら、お話にならないほどの破綻ぶりになっていた。
 何が失敗だったかといえば、何といっても、自分の体力のなさを考慮に入れていなかったことである。体力的な失敗がなければ、当初のスケジュールでほぼ行けていたと思う。バテて漕ぎ進まなくなってしまったので、どんどん遅れていった。もう1つ、リサーチ不足により今尾付近で遠回りになったこともある。
 それにしても、体力の落ち方がもっと激しかったら、養老駅に自力でたどり着くこともできなかったかも知れない。今後、レンタサイクルで「めぐ」をやるような時は、今回のように15か所【注】とか欲張らず、10か所以下で留めておくのが無難であろう。まあ、今回乗った自転車がひどかったのは間違いない。ペダルもがくがくしていたし、よくあれで40km以上走って養老駅まで乗れたと思う。ディマジオに似た名前の自動車教習所よ、スポンサーとして何とか改善してくれたまえ、マジで。

 自転車を返した後、しばしの待ち時間があって、養老駅から18:11発の大垣行きに乗った。大垣駅に着いたのは6時半過ぎであったが、電車が終着駅に着いてもすぐには立ち上がれなかった。こんなにヘトヘトになったのは、久しぶりであった。もう1泊してふらふら遊んで帰ろうと思っていたのだが、あまりに疲れてしまったので、在来線で名古屋まで出たものの、そのまま新幹線で東京に帰って来てしまった。往路を夜行バスで安く上げているので、復路で新幹線を使っても罪悪感は薄い。
 左足の膝の痛みは本当に辛かった。ひきずって歩くような状態で、これは階段の上り下りに多大な支障があった。東京駅をはじめ公共交通機関の階段の多さを、改めて思う。東京駅で新幹線ホームから階下に下りるのはまあ良いとして、下りてから新幹線改札までの間にまた階段があるのだ。そのうえ、今回私は購入した切符の関係から改札機を通ることができないので、端にある有人改札に回らざるを得なかった。改札を出ると、さらにもう1か所、踊り場1つ分ぐらいの階段。そこから中央線ホーム行きのエスカレーターまで歩き、一気にビル3階ぐらいの高さまで上がる。乗り換えの回数が1回増えるごとに、アップダウンの回数はどれだけ増えることだろうか。というわけで、都市生活では階段の数が大変多くなるけれども、それは大都市に限らない。むしろ、地方都市ではエレベーターの数も少ない分だけいっそう大変ではないかと思う。都市生活は健常者でなければ無理、というのが実感で、身体障害者は大変だろうなと思った。いっそ、電車でどこかに出かける機会もなくなったような人なら、田舎で隠居するのも良いのかも知れない。
 翌日は一日中寝ていた。起きる頃には、左足の膝の痛みはだいぶ消えていた。単に使い過ぎただけだったようだ。

58-1.jpg58-2.jpg

 【注】自転車で回った数。

[大垣共立銀 岐阜県海津市+2町完全制覇 完]

【お知らせ】「あとがき・参考文献」を明日18時に公開します。
posted by 為栗 裕雅 at 18:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 大垣共立銀 岐阜県海津市+2町完全制覇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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