最後までお読みいただいた方には、例によってダラダラと続いた連載にお付き合いいただき、御礼申し上げます。あとがき等も含めた分量は、最終的に250枚強(400字詰原稿用紙換算)となりました。
千葉県は、めぐる地域の特性、話題性、12店舗の店歴と、いろいろな点でバランスよくまとまっており、以前から本ブログで全店制覇を連載したいと思っていました。地域の特性という点でいうと、新線開業とともにできた新しい街(流山おおたかの森)、40年前に「新しい街」だった街(北習志野など)、戦前から続く古い街(市川など)。活気のある街、沈滞してしまった街。大都市の衛星都市、地方の中心都市、地方の小都市。ベッドタウン、商工地区、観光地、エトセトラ。12店はあらゆる属性を含んでおり、まさに日本の縮図です。店歴の点でも、旧協和と旧大和はもちろん、旧埼玉銀行の店もあれば、りそなになってからの新設店舗もあり。話題の点でも(あくまで私の関心の範囲から、という限定つきですが)豊富でした。12店という数も絶妙で、これより多かったら1日では回りきれませんので、1日使った「めぐ記」としてはまとまりが良い。素材としては最高であったと思います。
その「最高の素材」を、私の能力で果たして活かしきれたのか。これについては読者の判断に委ねたいと思います。食べてみて美味しかったか。読んでみて臨場感が味わえたか。まさに「神の味噌汁」と言うべきでしょう。
千葉県内を回って、1年が経過しました。この一年は私生活上、2度の引っ越しや情報機器(パソコンと携帯電話)の相次ぐ故障と、大きく動いた一年でした。こうした要素を除いても、専業ライターではないので発表までにどうしても時間がかかってしまうのですが、何かを立てようとすると別の何かが引っ込んでしまうのが世の道理というものです。
私はかつて学習塾に勤めていました。ここで働いた4年間は私にとって「失われた4年間」であったと思いますが、1つの言葉を知ったのは数少ない収穫でした。この会社の社是にあった「丁寧な遅い仕事より、雑でもいいから速い仕事」。
知ったことが収穫であったというのは、座右の銘にするような意味ではなくて、「物を考える材料」としてです。日常の大半を占めるのは定型的な仕事、いや仕事ですらない「作業」が多いでしょうから、そういう部分でいたずらに丁寧にやり過ぎて全体の進行が遅くなることは、確かに自戒すべきかもしれません。私はそういう傾向を自認しますので。
しかし、この言葉にはやはり限度があります。日常の定型的なことを何でもかんでも「雑でもいいから」速くすべきなのかどうか。そういうのを拙速といいます。「丁寧に速く」すべきではないのでしょうか。私は手前味噌ながら、仕事が丁寧で確実という評価を(ある程度)頂いていると思っており、特にそう感じます。雑な仕事には必ずフォロー(というより尻拭い)の手が入り、他人に迷惑をかけます。他人の手を煩わさなくても、二度手間になることが多い。それでもいいから雑に速く進行しろ、という考え方には賛成できません。
「雑でもいいから」という極端な言い方を「ほどほどでいいから」と変えれば、私の座右の銘に近いものになるかもしれません。ゆっくり丁寧にやるべき仕事や作業は、定型的な部分にも確実に存在します。時間がかかっても丁寧にやるべき仕事と、ほどほどに丁寧であればよい仕事。両者のメリハリを付けることこそ、絶対に必要ではないでしょうか。もちろん、非定型な動きに「雑でもいいから速く」は通用しません。私にとってはそのうちの一つが「『めぐ記』の執筆」であります。
「迅速性」がないことをこんなふうに言い訳しつつ、今後も頑張ってゆきたいと思います。蛇足ながら、上記のほかに「雑でもやった方が良い仕事」も存在しますが、それはまた別の機会に。
さまざまな思いが去来しますが、この連載はこれにて終了します。この連載を数年後に読み返して「古い」と感じられることがあるかもしれませんが、あくまで 2009年9月の実体験と、その後の連載期間における「一面の真実」です。そういうものだと思ってお読みいただくことを望みます。
この連載のような「文章を使っての自己主張」が、私の生き甲斐です。今後ともご支援・ご鞭撻をいただけますようお願いします。ご意見や情報提供をお待ちしています。このブログ「MEGU」は、コメント・トラックバックを歓迎していますし、私のメールアドレスも公表しています。
なお、この連載の執筆にあたっては、以下のような書籍・webサイト等を参照いたしました。
参考文献一覧
紙媒体は発行年順、webサイトは本文掲載順(2010.09.06現在)
武者小路実篤『牧野元次郎』 学芸社、1935年
『船橋市史』前篇 船橋市、1959年
『松戸市史』下巻(1)明治篇 松戸市、1964年
扇谷正造『すぐやる課太平記』 産業能率短期大学出版部、1971年
『角川日本地名大辞典 12千葉県』 角川書店、1984年
『習志野市史』第二巻史料編(I) 習志野市、1986年
『埼玉銀行通史』 あさひ銀行、1993年
『絵にみる図でよむ千葉市図誌』(上・下) 千葉市、1993年
『協和銀行通史』 あさひ銀行、1996年
樹林ゆう子『マツモトキヨシ伝−すぐやる課を作った男』 小学館、1996年
白土貞夫『ちばの鉄道一世紀』 崙書房出版(流山)、1996年
『周五郎が愛した「青べかの町」』 浦安市教育委員会、1998年
『大和銀行八十年史』 大和銀行、1999年
『続々三菱銀行史』 三菱総合研究所、1999年
『千葉県の歴史』別編地誌3(地図集) 千葉県、2002年
若林幹夫『郊外の社会学』 ちくま新書、2007年
「JR東金線」『鉄道で行く千葉』第8回 京葉銀行、2010年
『銀行総覧』 大蔵省銀行局、各年版
『日本金融名鑑』 日本金融通信社、各年版
『ニッキン資料年報』 日本金融通信社、各年版
『国立天文台』 http://www.nao.ac.jp/koyomi/
『松戸市』 http://www.city.matsudo.chiba.jp/index.html
「平成21年産日本なし、ぶどうの結果樹面積、収穫量及び出荷量」『農林水産省』http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kazyu/pdf/syukaku_ninasi_09.pdf
『柏市』http://www.city.kashiwa.lg.jp/Index.htm
「つくばエクスプレス」『首都圏新都市鉄道』 http://www.mir.co.jp/
『クリアヴィスタおおたかの森』 http://itot1.jp/otakanomori/
『流山市』 http://www.city.nagareyama.chiba.jp
「拝啓 市野谷の森気付 オオタカより」『流山発 ちょっと気になるWeblog』 http://oo2.s43.xrea.com/mt/archives/000445.html
「十三の里歴史探訪 地名に見る富里の歴史」『富里市』http://www.city.tomisato.chiba.jp/syoukai/tominosato/index_tominosato.html
「鉄道連隊演習線」『千葉県の戦争遺跡』http://www.shimousa.net/tetsudourentai/tetsudourentai_enshusen.html
『浦安市』http://www.city.urayasu.chiba.jp/menu3869.html
「一般戦災ホームページ」『総務省』http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/daijinkanbou/sensai/situation/state/kanto_09.html
「習志野原と軍隊」『船橋市立薬円台小学校』http://www.yakuendai-e.funabashi.ed.jp/narashino1.html
「北総線高額運賃の研究」『ちばにう倶楽部』http://www.chiba-newtown.jp/HokusoKenkyu.htm
「昔ながらのオランダ風車を復元」『こうほう佐倉』907号(2005.04.01)『佐倉市』http://www.city.sakura.lg.jp/koho/kohosi/050401.htm
「2010年デビュー!新型スカイライナー・成田空港まで36分」『京成電鉄』http://www.new-skyliner.jp/top.html
「ステーション・駅前の歴史いろいろ」『Old Map Room』http://oldmaproom.aki.gs/m03e_station/m03e_station.htm
「これだから千葉なんだよ!」http://www.youtube.com/watch?v=eSMbPK6IOAw
「ちばの観光まるごと紹介」『千葉県』http://www.kanko.chuo.chiba.jp/
「銀行変遷史データベース」『全国銀行協会』http://www.zenginkyo.or.jp/library/hensen/index.html
フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
【2010.10.11_19:04追記】参考文献が一部抜けておりましたので追加しました。大変失礼しました。